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fs花いちもんめ

fs花いちもんめ

JR三田駅前にあるフラワーショップ「fs花いちもんめ」の改装工事をさせてもらいました。

プランニング

「fs花いちもんめ」のオーナー店長である堂内氏は僕と同年代で、世界観も似ていたため、プランニングは前置きなく進めることができました。



しかし、男同士が考えるものは、どうしても男臭いスタイルを求めてしまします。いわゆる鉄にコンクリートに観葉植物といったブルータス系。ところが、堂内氏以外のスタッフは、このとき全員が女性で、しかも、どちらかというとフェミニンなタイプばかりだったので、店のイメージ的にも厳しいなと思っていました。 また、堂内氏はフラワーアレンジメントとしてのアーティストの一面もあるので、表現したいことが明確にあり、その世界観と、お店としてのニーズとの間で、揺れ動いているようでした。



「都会の駅前にいくつもあるフラワーショップならば、オーナーの求めるスタイルに絞ることができる。しかし、三田では幅広い需要に答えなければ商売としは成り立たない。」同年代とあって、ついつい仕事とは関係ない話題にスライドしていくなかで、最終的に堂内氏が出した結論は、概ねこういうことでした。

「でも、外観はずばりかっこよく男臭く行きましょう」という補足がなされ、外部の要望も提示されました。

以下に外部の要望をまとめる。

[防犯性]
繁華街に位置しており、日付が変わるころには酔っ払いや元気な青年達が行き来する。そのため、これまで通りシャッターをつける必要がありました。

[雨除け]
雨除け:お彼岸や、母の日などのイベントを「物日」というらしい。物日には広い遊歩道を利用させてもらい商品を並べるため、雨を遮るためにオーニングの要望がありました。
(※注意:オーニングは本来日、差し除けの為のものです。)

第一プラン

通常、コンセプトが明確になるにしたがって建物もデザインしやすくなるものです。しかし、この時はなかなかアイデアが浮かばずに、机の前で時間だけが過ぎていきました。打合せの期日も迫っており、危機感と焦燥感のなかで、突如いいアイデアが閃めきました。

正面のフレームは、シャッターボックスを隠すというアイデアから生まれました。しかし、実際に収まりを検討してみると、イメージ画よりもはるかに太いフレームになることがわかり、バランスが悪くなります。最終的には防犯は鉄の扉で対応することになりましたが、フレームのアイデアは最後まで残りました。


フレームの奥に植栽を計画することで、建物と植物の雑多なイメージを持たせることができ、また、ハンギングプランツを植えてもらえば緑が立体的になり、魅力的な外観になると思いました。

異なる世界観を持つ、それぞれの植物をディスプレイするためには、単なる売り場面積の拡大よりは、小さなブース分けが有効と考えました。螺旋階段は、空間を緩やかに区切ることができ、2Fの利用の利用とともに、商品のゾーニングを狙ったものでもあります。また、一部を吹抜けにすることで、決して高くはない天井に解放感を生み出せるとも考えました。

この最初のプランはとても好評でした。が、入口ドアの位置がお客さの心理的に入りにくいのではという点。正面のガラス部分を腰から上にしてほしという点。オーニングはどこに付けるのか?という点を後日、指摘されました。また、詳細の見積もりを提示する前ではありましたが、明らかに予算オーバーであろうことは、想像付いたようで、
堂内:「すごいいいです・・・・・でも、予算内に収まりますか?」
佐藤:「・・・・・そこなんですよ、問題は・・・」


僕は次のプランを考えることになりました。

第二プラン

このプランではファサードの改装はほぼ1Fのみとなるだけでなく、指摘されたオーニングの収まりもとてもいいものでした。最初のイメージとあまりに飛躍していますが、実は最初に堂内氏に見せて頂いたお店の外観が概ねこのようなものであったため要望に忠実になろうと心掛けた結果です。

しかし、打合せの反応はいまいちでした。彼は創作する側の人間として、初めのプランの力強さに賭けたいといってくれました。また、可能な限り僕自身の作家性を尊重したいともいってくれました。こう言われて僕自身のモチベーションがはね上がらないはずはありません。ここへきて、僕の心は掌握され、第一プランを踏襲することになりました。予算という不安材料はあったものの、堂内氏の熱意と、僕の熱意が同じ方向を向いた瞬間でした。


プラン決定

基本デザインが決まりました。懸念されていたオーニングも収める方法を思いつき、また、要望通り入口を正面に持ってきました。腰壁も付けました。

ただ、建物から突き出る植栽は諦めました。出入り口の雨除けを考える必要があるため、コンクリートのフレームの奥にポリカの屋根を設置する必要があるからです。

これが平面図です。既存の鉄骨梁は移動できないため、螺旋階段は二つの鉄骨梁の間に収めました。直径135cmのミニマムサイズです。

で、これが断面図です。オーニングの収め方に工夫がいりました。

これは螺旋階段の収まりを検討したパース図です。このころになると手書きからCADに変わります。イメージでしかなかったアイデアを、実際に寸法を決めCADに落とし込むことによって施工する寸法が導かれます。また、モニターを通して、サイズ感に違和感があれば、寸法をかえ、納得いくサイズ感に微調整することが可能です。

施工

施工条件でなによりも厳しいと思ったのは作業内容の多さに比べて与えられた現場施工の期間が3週間しかないということでした。「それが店を閉めておける最大です」と。

そこで、事前に、あまり使っていなかった2Fの工事を、店の営業と並行して行いました。2Fの外壁以外を解体をして、間仕切り壁の下地工事や、一部、塗装工事など、事前にできることは少しでもやっておく必要がありました。

また、正面のフレームもコンクリートなので、本来現場施工が望ましかったのですが、現場で型枠を組んで、コンクリートを打って、硬化を待っていたのでは、それだけで工期が終わってしまいます。コンクリートの梁は、最初に施工しないと、そのあとの仕事ができないのです。


そこで、ハンドワークスの倉庫の前の空地で、型枠を組み、コンクリートの部分を梁と柱とに分けて制作し、現場で組み立てる方法をとりました。梁は、重さが1t以上あり、長さは5.6Mありました。トラックを借りてきて、運んだのですが、斜めに積んだ梁がずれ下がっていくため、通常なら30分で着く距離を、1時間もかけて現場にたどり着きました。途中、大渋滞を引き起こしていたのは言うまでもありません。



また、木工事では、通常のように大工が現場で枠を取り付け、それを採寸してから建具を作っていたのでは間に合わないので、倉庫で枠と建具を作り、塗装まで行うことで現場作業を減らしています。


完成

外部

防犯用の鉄の扉は、いつもの通りチプラスタチオの佐々谷氏にお願いしました。

2Fのベランダのような場所には鉢植えの植栽が置かれました。また、正面のコンクリート梁の上には溝があり、ベランダの排水兼、ポリカの屋根の樋となっていて、その溝におかれているポットのワイヤープランツがいずれ垂れ下がっていくことでしょう。



内部

2Fに上がるための階段は、スタッフオンリーの作業室を通らなければなりませんでした。2Fはストックヤードとしての部屋もありましたが、もてあましている場所もありました。螺旋階段を設け売り場から直接上がれるようにすることで売り場面積を増やせるだけでなく、それぞれのブースに距離感が生まれ、シーンの切り替えが違和感なくできるようになりました。



この男前の螺旋階段は言うまでもなく、チプラスタヂオの佐々谷氏との合作です。


ラインナップ

デザイン/施工管理/大工工事/建具工事
コンクリート工事/什器/カウンター作成
ハンドワークス:佐藤 俊秀
外部仕上げ 白モルタル掻き落とし仕上げ、米杉鎧張り
内部仕上げ 珪砂配合石膏仕上げ、白モルタル掻き落とし仕上げ
エイジングウッド、白ペンキ
鉄扉、螺旋階段、什器作成 チプラスタヂオ 佐々谷 良
左官工事 藤田左官造園 藤田 勝行