建物の設計は人生の可能性の提案です。
趣味に没頭する部屋をつくるのか、
家庭菜園をするスペースを確保するのか、
3世代保つ家を建てるのか、
低予算で建てて、住みながら改善していくのか、
もちろん、建築主が要望を明白に持っている場合には、
それを実現するための建築的な提案になります。
しかし、要望が曖昧な場合や、夫婦の間で異なる場合には、
将来のライフスタイルに対するイメージを提案することから始まります。
当社の設計の特徴は、なんといっても大工仕事や木工の仕事がベースになっていることです。
といって、木ばかりを使うという意味ではありません。
化粧として木をあらわす露出度は、建築主の好みを優先します。
それは、大工の現場仕事の過程で、
偶然生まれた造形美や新しい発見がベースとなって
設計されているという意味です。
完成が決まっている「パズル」をはめていく過程で、
捨てがたい新しい形が見えてくるようなものです。
打ち合わせのプロセス
通常、設計士は直接施工するわけではありません。ですので、どうしても設計図面と現場仕事の食い違いができます。
図面的には収まっているのに、施工すると収まらないということはよくあります。勉強熱心な方なら、常に職人の横に居て、どういう問題が起きているのかを理解しようとする方もいるでしょう。しかし、通常は、監理業務まで担っている設計士でも、そこまで時間を裂くことはできません。
すると、どうなるかというと、現場で施工にあたっている職人が、判断して施工するということになります。
また、そもそも図面に表記されていない、あるいは表記することのできない細かい収まりや、下地材の入れ方なども、現場の職人の判断になります。
医者に例えると、病気の診断をした主治医と、実際に手術にあたるオペレータは別の人、ということです。そして、手術中の細かい判断も・・・
つまり、設計のデータをそのまま施工データとして共有することができ、設計段階では気がつかなかった施工段階の変更も、そのままデータ化しますので、完成した時のデータはまさに「家のカルテ」そのものになります。
施工手順のプロセス
建物は建築主様と共に築いた子供のような存在。
月日とともに美しさを増していく住まいを見守り続ける。
それは職人にとって、一つの楽しみでもあります。
よい状態を保つことは、よい成長をうながす
そう思うからこそ、アフターサービスも手を抜きません。
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自然素材を多く取り入れた家のため、建具やカウンターは冬場の乾燥により収縮します。特に、最初の年の冬場、それから梅雨の時期は、建具の反りが開閉に支障をきたすことも珍しくありません。材料を吟味して使っていても、自然素材は時として予想を裏切るものです。特に「一年定期点検」という決まりは設けておりませんが、最初の一年間は、それよりもっと頻繁にメンテナンスに伺うことをご了承ください。
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このころになると仕上げの素材は、ほとんど落ち着いてきます。しかし、逆に最初のころに問題がなかった作動部分にじわじわと問題が出てくる時期になります。例えばサッシのハンドルがガタついていたり、水栓の内部劣化による微細な水漏れだったりします。毎日動かす部分は摩耗していきますので、定期的な交換が必要になります。
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そろそろ、建物の防水部分の劣化が気になってくる時期です。特にバルコニーを設けた家の場合、防水性能の劣化は大掛かりな手直しが必要になりますので、注意して点検します。また、完成した時には小さかった庭木が大きくなり、地中に伸びた根が汚水管を痛めてしまう場合もあり、排水検査を実施しています。
部材ごとの経年変化について
薪ストーブ
薪ストーブを使っていると、木材が急激に乾燥することで「ピシィ」という音をたてて表面に微細な割れを生じることもありますが、ほとんどの場合が2~3年で収まります。また、焚き始に起きるわずかな煙の逆流によって、部屋の中がわずかにすすけていきます。薪ストーブを設置する場合は、「白すぎない内装」にするなど、気にならない仕上げにする必要があります。
バルコニーの防水
防水はさすがに自然素材というわけにはいきません。
レジャーボートや貯水タンクなのにも使われるFRP防水の想定耐久年数は10年です。
これは建物の寿命から考えるととても短いものですが、定期的に塗装のメンテナンスをすることで寿命が延びます。
軽度の劣化であれば費用が抑えられ、劣化を放っておくと下地からの工事費用がかかりますので高くなります。
メンテナンスの頻度は紫外線にさらされる環境によって変わってきますが、
短い場所ですと5年ほどでメンテナンスが必要になります。
広いバルコニーは素敵ですが、住んでからのメンテナンス費を考慮する必要もあります。
外壁
外壁のメンテナンスって必要なの?
これは戸建てに住んでいる方なら誰しも感じている疑問ではないでしょうか?
答えはYesでもありNoでもあります。
まずは、メンテナンスが防水という機能のためなのか、建物の美観のためなのかを考える必要があります。
さらに、防水のためなら、その条件としては外装材=防水層になっているかという点と、
軒の出が大きいか少ないかという点の二点です。
折りたたむ
築年数が古い家の場合、外壁の仕上げが防水層になっているので、外壁の劣化は致命的な打撃になります。しかし、築年数が新しい、かつ信用のできる工務店が施工した家の場合、外装材のさらに奥に二次防水が施されているケースがほとんどなので仕上げ材の防水機能の劣化にはそれほど過敏になる必要はありません。また、軒が深ければ、それだけ雨に当たる頻度が少ないので、築年数が古い場合でも、気にするほどではないと思います。
ところで、田園地域に出かけると、築100年はあろうかと思う日本家屋がたくさん残っているのを目にします。特に外装材をメンテナンスしているようではないのに、どうしてそれほど高い耐久性があるのか疑問に思ったことはありませんか?
実は、それは「物が雨に濡れる頻度」と「乾燥するスピード」というのがキーワードなのです。伝統的な日本家屋は木造ですから、なんとなく水に濡れると劣化していくような気がします。しかし、実際は木材を腐らせる不朽菌は長時間、湿気の高い状態が続かないと存続できません。つまり、濡れてもすぐに乾けば、木は腐らないのです。
伝統的な日本家屋は極端に通気性が高いのと、深い軒に守られて雨に当たりにくい構造を取っているため、木材が腐るという環境には至りません。防水性という意味では、メンテナンスの必要すらないのです。
しかし、通気性が高いというのは、この時代の工法ですと、そのまま隙間風が入ってくることを意味します。建物のためには良くても人間が住むには忍耐が必要だったのです。
逆に、現在の家はどうでしょうか?
気密性は確かに上がりました。布団のような断熱材も加わりました。それらは人間が住むのには快適であっても、湿気をため込む「密閉型」の素材なので、目で確認できない程度のわずかな漏水でも家に致命的なダメージを与えかねません。なぜかというと、水が入りにくい構造=水が出にくい構造である場合が多く、内部で蒸れた状態が続くと、僅か数か月で木材は腐ってしまうからです。
「水」というと雨水をイメージするかもしれません。しかし、もっと厄介なのが壁の中に眠っている給水管からのわずかな水と、温度差がもたらす結露水です。これらは一日でわずか数滴の水でしかありませんが、現在の密閉型の家を内部から腐らすのにはむしろ適量とさえ言えるのです。
さて、当社の標準仕様の外装材は「色モルタルの掻き落とし仕上げ」です。これは外装仕上げという割には、まったく防水性能がありません。むしろ、水をかけるとすぐに吸い込む性質があります。しかし、ぼこぼこした仕上がりはその表面積の多さから、風が当たればわずか数時間で乾燥してしまいます。
では、防水性能はというと、下地として先に塗りつけるセメントペーストが主に担います。さらにその奥に眠っている透湿防水シートが保険のような役目を果たし、水の浸入をブロックしてくれます。外部からの水を緩やかに防ぎ、壁の内部に潜んでいる湿気を速やかに排出する「開放型」の仕上げ材です。
しかし、「色モルタル掻き落とし仕上げ」はとても難易度の高い仕上げです。砂とセメントに色粉をブレンドしていきますが、材料が乾くスピードにむらがあったり、作業の途中に雨に濡れたりすることでも、狙い通りの色ができません。また、完全に固まるまでに表面を削り取る作業は、タイミングを見極める勘が仕上がりを大きく左右します。
あえて粒子が不揃いな砂を使うことで、風雨に削り取られた土のような味わいのある表情にしています。また、一軒ごとに色をブレンドして材料を作りますので、建物のイメージに合わせて色をカスタマイズします。
●床
●内壁
●屋根
●水回り